お金の本質を学ぼう
投資を理解するにはお金のことも理解しなければ。
ということで、今回は経済のお話です。
大人気の「闘う経済アナリスト 森永康平さん」も紹介していた
お金の本質がわかるたとえ話
モズラーの名刺について解説します。
モズラーって誰ですか?
現代貨幣理論(MMT)の提唱者の一人で、有名な経済学者です。
少し長くなるので、以下にウォーレン・モズラーさんについて少し書いておきますね。
今回の話「モズラーの名刺」は、現代貨幣理論(MMT)の「自国通貨建ての国債が破綻しない」という重要な概念を説明しています。
これを学ぶなかで、貨幣の本質と政府支出の関係性もすっきりと理解できます。
今回は、内容の主軸はそのままでケントくんとユウトくんに親しみやすいように学校に例えて解説しますね。
先生の名刺(モズラーの名刺)
先生の名刺
ここ “けんじゃ高校”には、資産運用の授業があります。
この授業を行う教室は結構広く、設備準備も手間がかかるのに、生徒達はほとんど掃除や授業の準備、後片づけをしません。
先生は毎日大変です。
それは ごめん!
架空の学校ですよ。
そこで、先生は「手伝いをすれば名刺をあげる」と生徒達に言いました。
しかし、生徒達は「先生の名刺は別にいらない。手伝いはしないよ」と言いました。
それもそのはず、生徒たちにしたら先生の名刺などただの紙切れです。
なに?悲しい話?
でも、正直いらないですね。
まあ、そうですよね。
先生の課題
そこで、先生はこんなことを始めます。
先生は
「毎月月末までに、10枚名刺を提出できなければ、テストの点数をマイナス100点にする。
繰り返せば進級できず、いずれ退学になる。」
と言いました。
この時から、名刺はただの紙切れではなく、学校生活を送るために必要なものとなりました。
生徒たちは手伝いを行うようになり、名刺を欲しがるようになりました。
ひどくない!?
マイナス100点って。
オレ、成績マイナスになっちゃうじゃん!
まあ、たとえ話ですから。
でも、なんとなく現実の話と結びついてきたと思います。
続けますね。
生徒同士の名刺交換
生徒たちはそれぞれ得意なことがあり、手伝いで名刺をたくさん集める子もでてきました。
その逆に、提出しないといけない10枚に、不足しそうな生徒もでてきました。
そこで、そのような生徒は自分の得意な教科で他の生徒を手助けすることで、その生徒から名刺をもらう活動を始めました。
やるじゃん!
名刺をあげる生徒も他のことで手伝ってもらえるから助かるね。
先生の借用書
生徒たちは手伝いを頑張るようになりました。
あるとき、今度は先生が対価として生徒に渡すための名刺の数が足りなくなりました。
なので、一時的に生徒に「1日後に名刺を渡す証書」を発行することにしました。
証書。つまり借用書(借金)ですね。
先生はこの借金を返せるでしょうか?
先生も頑張って手伝いをたくさんやればいい。
先生は印刷機で名刺を刷りました。
ひどい!
先生の借用書は、この経済システムのなかで破綻することは基本ありません。
ただ、こんな問題がおこります。
みんなが頑張って名刺を集めていくと、クラス内に流通する名刺の量が多くなりました。
毎月10枚の提出が余裕になり、みんな手伝いをしなくなってきました。
そうなるとクラス運営が難しくなり、教室も乱れてきます。
自業自得だね。
でも、教室が乱れると、生徒も過ごしにくくなるよね。
流通する名刺の量が増えて、名刺の価値が下がってくる。
つまり、これがインフレです。
では、名刺の価値を元に戻すにはどうすれば良いでしょう?
もしかして・・・
そうです。
必要な名刺の提出量を増やす。
つまり増税です。
そんな殺生な。
回収した名刺の分別
名刺の価値が安定したところで、こんどは先生の手元にはたくさんの名刺が集まってきました。
そこで先生はこの名刺を、
「綺麗なもの」
「古いものや汚れているもの」
に分別し、綺麗なもののみ再度流通させました。
先生はこのあと、「古いものや汚れているもの」をどうすると思いますか?
不足したときのために大切に保管しておく?
「古いものや汚れているもの」は燃やして捨てます。
不足しそうな分は、また印刷機で刷るので保管は必要ありません。
えぇー!
なんか衝撃!
もうわかったと思いますが、
- 名刺=自国通貨(お金)
- 先生=政府
- 学校=国
です。
さらに、
- 先生から名刺をもらう行為=労働と報酬
- 名刺の提出=納税
- 借用メモを渡す=国債の発行
- 生徒同士での名刺やり取り=市場でのサービス取引
といった感じですね。
本当だ。
お金の仕組みがとても理解しやすいですね。
徴税というシステムを作ったことで、紙切れだった名刺に価値が生まれました。
労働により名刺をもらえることで、今度は労働の価値が測れるようになります。
また、生徒と先生(学校)では、名刺の価値が全く異なることも面白いですね。
生徒にとっては、すごい価値のあるものだけれど、
先生にとってはただの紙切れなんだね。
学校側には、名刺そのものに価値はないってことか。
いまの話だけだと誤解しそうですが、現実の経済システムは国民が豊かに暮らすためのシステムです。
お金の仕組みを知るための物語として捉えてくださいね。
なるほど。
わかりました。
モズラーの名刺 まとめ
この話は、MMT(Modern Monetary Theory、現代貨幣理論)の考え方が基礎となっています。
この話で重要なのは、以下の通りですね。
まとめ
①「徴税で通貨価値を固定する」
- 自国通貨でしか納税することができなくすることで、政府が発行する通貨に価値を持たせることができる。
- 自国通貨発行量を調整することが可能。
それにより、価値をコントロールすることができる。
②スペンディング・ファースト(最初に支出する)
お金の発行を先にして、徴税は後にしている点に注目してください。
- お金の発行ができる政府は、国家として公共事業などに投資を行う際には、お金を税収で全て集めてから賄う必要はなく、先に投資を行い、後から徴税で回収することが可能です。
つまり国家に限っては、税収で集めたお金がなくても、投資は可能ということがわかります。 - 政府は、高インフレにならない限り通貨を無尽蔵に作り出せます。
つまり「政府の支出を賄うために税金が必要」なのではなく、「政府が国民に課した税金を払うために貨幣が必要」ということになります。 - 自国通貨を発行できる政府は、財政赤字の心配をする必要がありません。
今回の話では、自国通貨建ての国債が破綻しないということが、分かりやすくイメージできると思います。
つまり、高インフレにならない限り、財政破綻を恐れることなく積極的な財政政策を行うべきと考えられます。
③個人と国家(全体)では、自国通貨の価値が全く異なる。
生徒はただの紙切れであるはずの名刺に高い価値を見出して必死に集めていました。
期限内に提出しないと、最終的には退学になってしまうからです。
では、学校(先生)はどうだったでしょう?
先生にとって名刺は、自由に刷ったり廃棄したりできるただの印刷物でしかありません。
つまり、学校側にとっては名刺そのものに価値はないということになります。
MMT(Modern Monetary Theory、現代貨幣理論)
MMT(Modern Monetary Theory、現代貨幣理論)は、特に貨幣政策と財政政策についての新しい視点を提供している経済学の一派です。
今回とても勉強になりました!
MMTは数ある理論のひとつであり、様々な考え方が存在します。
どの分野でもそうですが、大切なことは、
「学者の方々が考えた理論をさわり部分でも学ぶことで、自身の思考が広がっていく」
ということ。
これからも少しずつ学んで、自分の世界を広げていってくれると嬉しいです。
MMTの主な主張をざっくり解説
- 自国通貨を発行できる政府は、財政赤字の心配をする必要がない。
つまり、高インフレにならない限り、完全雇用の実現に向けて積極的な財政政策を行うべき。 - 政府は通貨を無尽蔵に作り出せるため、「政府の支出を賄うために税金が必要」なのではなく、「政府が国民に課した税金を払うために貨幣が必要」。
- 自国通貨を発行できる政府は、財政破綻を恐れることなく積極的な財政政策を行うべき。
MMTは、従来の経済学とは異なる視点をもって展開されており、今後の経済政策に影響を与える可能性を秘めています。
ただし、MMTには批判も多く、特にインフレ問題や財政規律維持についての議論があります。
この理論はまだ発展途上であり、その有効性や適用範囲については研究が続けられています。